Town & Gown HUPS

Town & Gown 広島大学 for 子育て支援(TGHUPS)について

このページでは,TGHUPSの活動の一つである乳幼児の発達理解や子育て支援の情報発信を行っています。

私どもが考える子育て支援とは,乳幼児を育てる親御さんたちにこどもの成長の足跡と親御さんたちの今の子育ての具体的な取り組みを一緒に共有し,確認しあうことからスタートします。

こどもと全力で遊び,親御さんと楽しみを共有し,確認しあうことは,私たちにとっても嬉しいことです。私たちが全力で遊ぶには,私たちの働きかけに対するこどもさんたちの反応が面白かったり,伝わりにくい場合にはどうしたら伝わるのかな?と試行錯誤しながら工夫していく必要があります。そんな工夫のなかでこどもたちの成長の足跡が見えてきますし,これまでの親御さんたちのこどもさんへのかかわりや子育ての一部が垣間見えてきます。

私たちは,親子遊びを大切にしています。私たちは,親子のかかわりや遊びを一緒に過ごさせていただく中でこどもさんや親御さんの「いいとこ発見」ができていきます。発見された「いいとこ」は,担当者や支援者から実感をもってフィードバックする「ポジティブフィードバック」を中心としてこどもや保護者と共有されます。

こうした実践の場は,2023年度,東広島市と広島大学のTown & Gown Officeの共同研究の取り組みであるCOMMONプロジェクトとして実施されてきました。

「2歳の日」・「2歳の日フォロー」

COMMONプロジェクトの一環として,1歳半健康診査を終了した親子に親子遊びの場として「2歳の日」を2023年5月に立ち上げ,2024年3月まで運用してきました。「2歳の日」では,親子遊びの設定遊びを中心として,その活動のなかで見られるこどもの成長の足跡(遊び方の現状からみられる具体的様子)と保護者の子育ての具体的取り組み(こどもとの遊び方,かかわり方から見られる具体的様子)を担当者(東広島市こども家庭課保健師,西条あおい保育園子育て支援センター支援員,広島大学心理学プログラム学部生・大学院生・教員)とで共有し,ポジティブフィードバックがなされてきました。

「2歳の日」とは,西条あおい保育園子育て支援センター,東広島市こども未来部こども家庭課と広島大学心理学プログラム「2歳の日」チームの三者間協働による親子遊びのプログラムです。本プログラムの目的は,親子遊びを通じて「今,ここで」の子どもの「育ち」と親の「育て方」について保護者と担当者間で「いいとこ発見」を行い,ポジティブフィードバックを介して共有することです。

2023年5月から運用スタートした「2歳の日」は,2024年3月で終了しました。2024年度には「2歳の日フォロー」が数回実施される予定です。

「2歳の日」の終了。そして新しい展開。

「2歳の日」は1歳半乳幼児健診で保健師が経過観察として判断し,健診事後フォローの対象とならない乳幼児の親子を対象としてきました。「2歳の日」に参加される親子は,発達の偏りとか,こどもの発達支援が必要と明確に判断されたわけではなく,少し育てにくさを持つこどもさんの子育てをサポートし,元気づけるための場として位置づけられてきました。つまり,親支援の場です。決してこどもさんたちの発達の偏りを発見し,指摘し,療育につなげていくような場としては位置づけておりませんでした。そのため,東広島市の担当保健師さんたちも一緒に,「2歳の日」の活動に参加し,乳幼児健診も同時並行に経験を積み上げていくと,保健師さんたちが求めているのは健診事後フォローとしての受け皿が必要であったことが明確と意識づけされるようになりました。そのため1年間で「2歳の日」は終了となり,健診事後フォロー教室の充実強化がはかられるようになりました。行政としては,とても大切な気づきであり,行政の課題の本質を見出した点で高く評価できると思われます。今後の行政の課題発見・解決能力の発揮を見守っていきたいと思います。

用語解説

本ホームページ上で使用する「今ここで」の子どもの「育ち」と親の「育て方」について:

子どもの「育ち」

 親子遊びの中で表現される子どもの発達・成長の今の立ち位置(できること,できないこと,新たな挑戦でクリアできたこと,遊びを通して変化するこどもの柔軟性など)のことを示しています。

親の「育て方」

 親子遊びの中で子どもとともに“楽しく遊ぶ”ための様々な工夫のなかで見えてくる親の子どもを促し,見守る日常的姿勢や工夫のことを示しています。親の「育て方」は,日常的姿勢や工夫として,親子遊びの場や初めて会う担当者と慣れるための親子の工夫,おもちゃを使った遊びにのせていく工夫や設定遊びに合わせていくための工夫として表現されてきます。

「いいとこ発見」

 子どもの「育ち」と親の「育て方」の素敵な部分を発見し,その場で称賛し,共有することをいいます。具体的には,親子遊びのなかで個別の自由遊びや集団での設定遊びのなかで,楽しむことに集中することで様々な工夫や発見が生れます。子どもの柔軟な対応力(遊び込む力,変化する力など),コミュニケーションの芽生え(要求や他者へのかかわり・関心など)などが見えてきます。こうした「いいとこ発見」を親子遊びの場で共有したり,後のポジティブフィードバックで共有したりします。

「ポジティブフィードバック」

 親子遊びの中で子ども,保護者,担当者が遊びと場所と時間を共に体験したことをベースに,担当者が実感をもって保護者に伝えられる「いいとこ発見」の内容を保護者に伝えることをいいます。ポジティブフィードバックでは,保護者が気づいていることも気づいていないこともあり,保護者と担当者間で気づきにズレがあっても,共に遊びと時間と場所を共有し,楽しい体験をした仲間として保護者にはポジティブに受け止められるようです。実際,担当者からのポジティブフィードバックを受けた後に,保護者が日常では気づかなかった子どもの親へ向けた愛情を伝える機会にもなっているようです。

 乳幼児健診で紹介された保護者は,すでに子どもさんの成長や発達について気になっていたり,なんらかの手助けを必要としていたりする親子さんのことが多いです。それでも改めて健診という場で子どもさんのことを気になると保健師さんや心理士さんに伝えられるのはとてもつらいことであり,傷ついてしまいます。そうした背景を抱えて参加を決意し,行動を起こしてやってこられる「2歳の日」では,保護者はとても緊張し,なにを指摘されるのか,なにをさせられるのかと疑心暗鬼であることも当然のことです。「2歳の日」は,自由遊び,設定遊び,自由遊びという流れで親子遊びをしていく場にしています。親子遊びでは,それぞれの親子の組に担当者(保健師あるいは学生)を配して一緒に遊び,楽しさやできた・できる体験を共有していきます。そこ担当者は,遊び込むことに熱中し,楽しい体験を模索し,実感として共有できて初めて,こどもの「育ち」と保護者の「育て方」を共に体験することができます。

 「2歳の日」の担当者の声:「2歳の日」に参加した担当者から情報発信をしていただいています。

2023年度

2024年度